幼い頃の思い出 小学三年生まあちゃんの一人旅 その2

両親と兄姉の4人はこの青山町羽根の森本家の
実家に疎開しました。

疎開先には住む家はなく一家は小さな川の河川敷にある
農機具小屋で暮らすことになります。

その農機具小屋で戦後3年の年の昭和23年に
まあちゃんは生れ落ちました。

今はその小屋はありません。

さて旅の二日目です。

いよいよ森本家の本家訪問です。
まあちゃんの顔見せ。

本家は小さな川の右岸にあります。
森本家です。

ちいさな訪問者は大歓迎されます。

「まあちゃんか、まあちゃんはあそこで生まれたんだよ」と
遠くに見える農機具小屋を指さすいとこのよっちゃん。
この方は後に名古屋に出てT銀行の支店長に出世します。
とても明るい方、ほかにもそのお姉さんのかあちゃんという女の子。

このかあちゃんはその後伊賀上野に嫁ぎ、
やはり上野に嫁ぐことになって花屋さんを開いた実の姉の一子の
良き相談相手に。ドラマは後の歴史に引き継がれていきます。

森本家の方々はご両親やそのお子達もとてもいい方たち。
その日以後、毎日のように歩いて森本家に遊びに行きます。

すぐ前の川で泳ぎをよっちゃんから教わります。
近くの深いえんば淵という川のたまり場では
ほんとうに深い淵に潜りナマズをついたり、
前の川で瓶におがくずを入れて魚を誘い込む
仕掛けを作って翌朝に瓶を見に行くと、魚がびっしり。

都会では味わえない思い出深い体験を数々させて
いただけました。

あんまり森本家ばかり行くので、
家に戻りますとおばあちゃんがまた恐ろしい。
小言が多かったけれど、なんだかおばあちゃんは
本当はとてもやさしいんだと感じました。

家の裏には大きな畑があって、そこを歩くと蛇がうじゃうじゃ。
怖――い。そのせいか今でも蛇が苦手です。

いつかなんか畑を歩いていて土に埋めてあるカメの中に
足を突っ込んでしまいました。糞尿まるけです。
信じられない臭さ。
昔はこれを平気で畑にまいていたんです。

後に飯島さんにお会いした時、糞尿処理の空気振動の
設備を前に、匂いがなくなって完全発酵し糞尿も
紙もみんな水になった状態を見ながらこれが一番いい肥料なんだよと
つぶやく光景に出合おうとは夢にも思えずにいましたが、
その場では小さい頃はまった足のことを思い出してウンウンと
うなずく自分がいました。(笑)

こうして最初は少しホームシックにかかっていたまあちゃんでしたが
楽しい日々は瞬く間に過ぎ去り名古屋に戻る日が来ました。

森本家にご挨拶に伺いました。
そして喜多家の方々とのお別れ、のぶちゃんは泣きそうでした。

名古屋から単身迎えに来てくれた今は亡き姉の一子と
共にお別れします。

怖いおばあちゃんは最後まで
「はよ行きさ!!」です。

こうしてまあちゃんの大冒険の一か月は終わりました。

      つづく