致知出版社の「一日一話 読めば心が熱くなる・・」 その9~繁栄の法則

「繁栄の法則」

北川八郎 陶芸家

 物事を肯定的に捉えた上で、物事の繁栄の
ためにまず大切なのは「喜びを与えること」と
「感謝する」ことです。

 熊本地方の方言に「モチ投ぐる(投げる)」と
あります。誰かにモチをあげると、あんこの入った
団子になって返ってくる、つまり人に善意と好意を
与え続けていると、それ以上のものになって自分に
返ってくるという普遍の法則が働いています。

 この世界には、このような法則が厳として
存在します。繁栄は、まず喜びを与えることから
始まるのです。決して奪うことや儲けることでは
ありません。生きていく上では、お人好しでも、多少
人よりテンポが遅くても、流行のバスに
乗り遅れてもいいのです。

 また、人はもらったものを自分の周囲に返そうと
します。喜びを与えられたら喜びを、憎しみを
与えられたら憎しみを、いじめられたら怒りを
返そうとします。難しい話ではありません。

 商売の基本も同じです。お客さんの心を打つ
ようなもの、生き方を変えさせるようなものを与える
奉仕の哲学を大前提として持てばよいのです。
ところが、これが言葉では簡単なようで、実際は
とても難しいのです。とにかく、実社会では利を
上げることを中心に会社は動いています。

 大事なのは、利益よりも先に信を選び、品物を
売ることや売り上げを目指すのではなく、”信”を
得ることを身につけることです。銀座の真珠会社の
ナンバーワン社員は高いものを売りつけず、お客さんの
予算の中で一番ふさわしいものを探し、値よりも信を
買ってもらうことでナンバーワンを保ち続けています。
大分の自転車屋さんは修理大好き自転車屋と
看板し、人の役に立つことに生きがいを感じ、
たくさんの人の好感を買っています。「利よりも信を」
「拡大よりも充実を」です。

 ところが「与える」とう発想に私たちは慣れていません。
ですから、発想を百八十度転換し「与えることが難しい人は、
自分が少し損をしながら毎日を生きてみる」と提案しています。
具体的には自分の思っている十パーセントを目安に
「損」をして生きるといいでしょう。

 飲食店を例にとりましょう。
飲食店経営で大切なのは、値段に見合った料理よりも、
少し、十パーセントでもいい品物を出すことです。
千円の料理だったら千百戦円の料理を出すように
心がけることが大切です。さらにお客さんに幸が
あるように祈りながら、料理を作るのです。

 一般に、人は、「ちょっとは儲けないと損だ」と考えて、
千円の料理なら九百円の料理を出そうとします。ほんの少し
ケチります。その「ケチリ」、その邪な心を気づかれ、
お客さんを遠ざける結果を自ら招いているのです。
お客の喜びに参加するお店には「安らぎと居心地のよさ」が
あるのです。