ジャストナウに救われて

六年前の5月のある日新聞の記事を家族で見ていた。

そこには子供たちと幼き頃ともに遊びに行った木曽駒の里の記事が載っていた。

開田高原。

馬房が解放されて、馬に直接触れることができると書いてあった。

もう肺の機能が低下して酸素を吸入しなければ辛い娘が言った。

[行きたい…]

明日はそれでも平日。

すぐ決断した。家内と娘と三人で行こうと。幼き頃訪ねた開田高原。

牧場で娘は馬に乗った。

アイスクリームもほうばった。とても美味しかった。

車で3時間。酸素ボンベを携帯しての旅。娘はやや辛そう。到着は3時頃。

馬房は閉まる直前。お世話の方は車椅子の娘を見て、尋常ではないことを一瞬で悟り、案内してくださった。

木曽駒に触らせてくださり、放牧の馬たちも見学させてくださった。

思い出のアイスクリームのお店で、再びアイスクリーム。

夕暮れ。牧場を後にした。

その一ヶ月後、娘は旅立った。

残された老夫婦は、思った。すぐに決断して牧場に行って本当にによかったと。

娘との最後の思い出でである。

すぐやることのありがたさは何にも替えがたいと、強く思う。

後悔がないから。