尊敬するということ
尊敬するということは、ただ懐手で眺めているということではなくて、自分の全力を挙げて相手の人に迫っていくことです。地べたをはってにじり寄っていくようにーです。つまり息もつけないような精神の内面的緊張です。薄紙一重もその間に入れないところまで迫っていく態度です。
迫ろうにも迫れないと思っているのは、君がまだ真に迫ろうとしていないからです。人間としてのほんとうの力が、まだ動き出していないからです。つまり生命の要求が弱いのです。
しかしさればと言って無理はできません。現に私も、高師在学中のまる四カ年というものは、一度も西先生のお宅へ伺ったことはありませんでした。そうして大学を出て数年してからボツボツ先生の教えを受けるようになったのです。
実際人間というものは、自分の生命力の弱い間は、生命力の強い人にはなかなか近づけないものです。そこそれまでは、内に力の湧いてくるまで、じっとしていることです。
ここに力の湧いてくるというのは、優れた人の真のお偉さが分かり出すまでということです。自分が偉くなったと思う事ではなくて、先生のお偉さが分かりかけるという事です。