森 信三 運命をひらく 365の金言 42 「死後の生命」

死後の生命

 死後の生命をどう考えるかーーという問題ですが、佳き人にめぐりあえたら死後もその人の心に遺るのは確実でしょう。つまりこちらは先に死んでも、相手の心に印象や思い出は尾をひきましょうね。またたとえ相手の人が死んでも、もしその人が卓れていたら、他人にも伝わる可能性はありましょうね。同時にそれ以上を考えるのは人間の欲というものでしょう。外道です。だが死後もこういうふうな形で生き残るといえることは一おう事実といえましょう。

 一般的に死後があると言ったら誤解があり、また死後は無いといっても異論がある。この微妙な点を釈尊もわかっておられたと思いますね。況んや相手かまわずに、「あなたは死後があると思いますか、死後はないと思いますか」などと、人に質問するのは、全く宗教というものが分からん人といってよく、いわんや大ぜいの人のいる前などでそうした質問をすること自身、相手の方に対して非礼というべきでしょう。そもそもデリカシーということのわからぬこと自体が、信仰がわからんというわけです。

 死後のことは分かりません。私は死後は生まれる前のいのちのふる里へ還るものと信じています。しかし論証は出来ません。それゆえに生きている間は、お互いに精いっぱい生きなければなるまいと思っています。わたくしの申す「人生二度なし」というのはそこから生まれたコトバです。