森 信三 運命をひらく 365の金言 39 「野心と志の区別」

野心と志の区別

 人間が志を立てるということは、いわばローソクに火を点ずるようなものです。ローソクは、火を点けられて初めて光を放つものです。同様に又人間は、その志を立てて始めてその人の真価が現れるのです。志を立てない人間というものは、いかに才能のある人でも、結局は酔生夢死の徒にすぎないのです。そして酔生夢死の徒とは、その人の心の足跡が、よたよたして、跡形もなく消えていくということです。

 そこからしてまた私たちは、また野心という言葉と「志」という言葉との区別をせねばならぬでしょう。野心とか大望というのは、畢竟するには自己中心のものです。すなわち自分の名を高め自己の位置を獲得することがその根本動機となっているわけです。ところが、真の志とは、この二度とない人生をどのように生きたら、真にこの世に生まれてきた甲斐があるという事をかんがえて、心中つねに忘れぬということでしょう。ですから結局最後は、「世のため人のために」という所がなくては、真の意味で志とは言いがたいのです。