全一学は人によりそのニュアンスはもとより、凡てがそれぞれ違うべきで、唯一の水晶体みたいなものがあるとでも思ったら誤り、これより大なるはないのです。
ですから、もしも私の死後に、このような考え違いをする人があったらと思うと、死ぬにも死なれん思いですね。
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ですから全一学は、これまでの西洋哲学と比べたら、在野的な色調を二、三割近く帯びるともいえましょう。少なくとも、学者とそれ以外の人との間に境界線だけは引かないというのが特徴といってよいでしょう。
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宗教とは、第一に我執という枠がはずれること。第二には、現実界そのものがハッキリと見えるようになるということ。第三には、この二度とない人生を、力強く生きる原動力となること。真の宗教には、少なくともこうしたものが無くてはならぬでしょう。
この内第二の現実の明察という「察」の力を養うのが、また宗教の力でなくてはならないのに、多くの宗教家は、この点についてあまり言わないようですね。