真の叡智とは、自己を打ち越えた深みから射してくる光であって、私たちはこの光に照らされない限り、自分の真の姿を知り得ないのであります。そうしてかような反省知、自覚知を深めていくことによってわれわれは、万有の間における自己の真の位置を知り、そこに自らの行くべき大道を見出すことができるのであります。
かくしてわれわれ人間が、天地宇宙の間に生まれ出た一微小存在としての人間の道は、このように、天地を背景として初めて真に明らかとなるのであり、さらには天地の大道と合するに至って、初めて真の落ち着きを得るわけであります。
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人間は自ら気付き、自ら克服した事柄のみが、自己を形づくる支柱となるのです。単に受け身的に聞いたことは、壁土ほどの価値もありません。
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自分が躬をもって処理し、解決したことのみが、真に自分の力となる。そしてかような事柄と事柄との間に、内面的な脈略のあることが分かり出したとき、そこに人格的統一もできるというものです。
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死後にも、その人の精神が生きて、人々を動かすようでなければなりません。それには、生きている間、おもいきり自己に徹して生きる外ないでしょう。