2520「青空ひろば」2021.11.18 自分で自分を自分するから

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今回は立花大敬さんのワンディー・メッセージ「青空ひろば」から最近の記事を紹介します。

468 2021.10.13 ~470 2021.10.15

「私の読書法」

(生徒会図書委員会発行の『讀者の言』に掲載された文章です)                            

永年読書を続けてきて、私なりに工夫して身に付けた読書法というか、読書方針があるので紹介したいと思う。

(1)原典読書

「解説書を10冊読むより、原典を何度も熟読せよ」というのが、私が得た教訓だ。

大学の卒論で、条件反射の諸現象をすべて起こすことが出来る神経回路網を考えるという研究をやった。その時、条件反射に関する研究書を多数読んだがうまく構想が練れなかった。

ところが、パブロフ本人が学生達に行った講義(『大脳半球の働きについて-条件反射学』岩波文庫)を読んだところ、パーッと視野が広がって、一気に研究の方向性が見えてきた。それ以来、解説書は出来る限り読まずに、直接「原典」にあたるようにしている。

私の人生における「原典」は、陳腐で申し訳ないのだが、『論語』と『新約聖書』と『法華経』だ。

高校生の頃は『荘子』が好きで、『論語』は敬遠していたが、歳を取るほど『論語』の味わいが分かるようになった。

『法華経』は、不完全性を含みこんで全体性を目指す動的な経典で、何だったら自分の人生でもう一章書いてやろうかという気持ちにさせる不思議な経典だ。

宮沢賢治もきっとそんな気持ちから創作したのだろう。真言宗からでなく、なぜ天台宗(『法華経』を所依の経典とする)から鎌倉時代の諸宗派が発生したのかよく分かる。

(2)音読読書

私は音読が好きで、特に上に挙げた人生の「原典」は、黒豆(活字の喩え)を一粒、一粒口に運ぶように、ポツリ、ポツリと声を出して読んでゆく。意味が分からないところも、意識に引っ掛かりが生じないときはそのまま読んでゆく。

新約聖書の音読では、『注解新約聖書 ヨハネ傳』(黒崎幸吉,立花書房)を使用している。初版が昭和5年という古いものだ。古書店の百円コーナーで見つけた。

聖書の本文の一文、または数文章が、まず掲載されていて、その後に文字の説明や解説が細かい文字で書かれている。

本文の文章が切り離されて並んでいるので、音読のリズムにピッタリする。文章から次の文章に移るが、味わったり、考えたりする時間にうまくはまる。意識に引っかかりが生じたら、黒崎氏の解説を読んだらいい。

『論語』は、もともと孔子の言行の断片の列記なので音読に適している。

渋沢栄一氏の『論語講義(1)~(7)』(講談社学術文庫)は、先ほどの黒崎幸吉氏の本と同じような体裁のもので、それに分冊されていて、一冊が軽いものなので有難い。というのは、私は坐禅の姿勢で、書物を手に持って音読するからだ。 

(3)仇敵読書

趣味として、憩いとしてする読書はその限りではないが、一生涯掛けてする読書もあるはずだ。

私の場合、その命がけの読書は『正法眼蔵』(道元,岩波文庫)で、何度断念してゴミ箱に放り込んだか知れないが、未だにしつこく読み続けている。一文を読み解くのに3年間掛かったこともあった。今では、好敵手として、『道元君もなかなかやるなあ』と思えるほどになってきた。あきらめず読み続けてよかったと思う。(完)

467 2021.10.12

私はあなたを許します。あなたも私を許してくれますように。

あなたも私もその時は、それが精一杯だったんだと、今は理解できますから。

465 2021.10.10 ~466 2021.10.11

道元禅師の『典座教訓(てんぞ きょうくん)』に示された、禅道場における調理係(典座)の「仕事手順」です。

①昼食(斎)後、・ (管理職)のもとに行き相談し、翌日の朝食、昼食の食材を確保する。その食材を大切に保管する。

②台所に諸知事(各部署の部長)が集まり相談する。「明日はどんな献立にしようか、どんな惣菜を調理しようか。必要な数は?」(禅道場は人の出入りが激しいので、人数の把握が難しい。また、明日が肉体労働をする日にあたっているなら、食事の分量を増やしたり、塩分を多くしたりしなければならない。また、病室に何人入っているかに合わせて、個別に病人用の調理もしなければならない。そのためには、各部署を掌握している管理職の人たちとの打ち合わせが欠かせない)

③献立を掲示板に書き出して僧たちに知らせる(特定の食材にアレルギーを持つ人があれば、掲示板の献立を見て、典座に知らせて特別メニューに変えてもらうことも出来る)。

④米を研ぎ、野菜を調理する。「自ら手ずから親しく見、精勤誠心にして作せ。一念も疎怠緩慢にして、一事をば管看し、一事をば管看せざるべからず」

(註)一つの作業に気をとられてしまって、他の作業がおろそかになってしまわないように、全体に気を配って仕事をするように、と注意されているのです。

⑤六味・三徳が備わった調理を目指せ。

六味:苦・酢・甘・鹹・淡  三徳:軽軟(胸にもたれない、固すぎない)・浄潔(清潔)・如法(食材の持ち味を殺さない)

⑥朝食の準備が終わると、つぎに昼食の準備に入る。まず、必要なだけ鍋や釜など、食器や柄杓などを洗い清め、それぞれ高いところに置くべきものは高いところに、低いところにおくべきものは低いところに整頓して置く。

「高処高平、低処低平(重い食器は下に、軽い食器は上に安定させて置く)」,「軽手に取放せよ(食器を荒々しく扱わない)」

⑦まず、米や野菜の不純物を取り除く。食材に文句を言ってはいけない。取り扱いが粗雑になってはいけない。

⑧ご飯が出来上がれば、飯桶に収めて、飯台の上に安置させる。汁物やおかずの調理の出来上がりとご飯の出来上がりのタイミングが合わせねばならない。

⑨調理が完了したら、袈裟を身につけ、坐具を展べ、僧堂を望んで礼拝し、それが終わってから食事を僧堂に送り出す。(完)

464 2021.10.09

薬山は牛小屋をねぐらにしていた。そこに人が集まって、その牛小屋を改造して禅の道場とした。

弟子の代表者が薬山に説法して下さいとお願いした。

薬山は了承したが、演壇にのぼると、ひと言もしゃべらないまま降壇した。 

弟子の代表は薬山に「なぜ説法して下さらないのですか」と詰問した。

薬山は言った。

「お経のことはお経の専門家に聞いてくれ。論(仏教理論)のことは論の専門家に聞いてくれ。<ワシが掛け値無しの、このままのワシである>ということに文句をつけることができるやつなんて、宇宙全体を捜しまわってもいるもんか」

(註)あなたは文句なしに、独自独尊のかけがえのない「あなた」なんですね。

463 2021.10.08

薬山禅師にある僧が質問した。

「師はどなたの教えを受けられ、どなたの法を嗣がれたのですか」

薬山は答えた。

「古い寺の仏殿で一枚の紙切れを拾った。そこには文字が書いてあった」

僧はたずねる。

「何と書いてあったのですか」

薬山は答える。

「<私は彼と違う。彼は私と違う>と書いてあった」

(註)あなたはあなたでOKなんですね。

462 2021.10.07

唐の時代の薬山(やくさん)禅師に、ある僧が質問した。

「師の悟りはどういうものですか」

薬山は答えた。

「ワシはブルブル、オロオロ、百拙千醜(ひゃくせつ せんしゅう)の人生を生きてきただけだ」

(註)この薬山禅師の解答の「深い愛、思いやり」が分かりますか。

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