泥棒さん

ちょっと恥ずかしいお話ですが お話しさせてください。

まだ中川区に本社があったころのお話です。

当時の過去数年前にも幾度かあったのですが、
久しぶりに泥棒さんが会社の事務所に入りました。

玄関のドアガラスをわって、ドアノブをまわして入る簡単な方法です。
深夜には誰も通らず、しかも本道から一本入った細い道の
すぐわきにある本社ですから入りやすいのでしょう。


もちろんレジのおよそ三万円のお金はなくなりました。
レジには泥棒さんが入ったときにがっかりしないようにと
またお金が無くて、腹立ち紛れにそれ以上のことをしないようにと
レジを半開きにして、およそ三万円を置いておく決まりにしていたのです。 

事務所のみなさんの机はほとんど引き出されていました。

警察の方々の現場検証があります。
そのとき「泥棒の方」と言ってしまいましたが、
警察の方に「泥棒の方?ですか?」と言い返されてしまいました。(笑)
その日のことは火災保険でドアの修理となくなったお金は
保障されました。

レジは一万円に減額しました。
それから二度目はそれから二週間後でした。
まったく同じ方法で入ってきたのですが
泥棒さんは一目散にレジに行き、お金だけを取り
ほかには何も触れませんでした。

また現場検証。
そのときも保険で保障されました。
またあるかもしれないと、会社の皆さんが入り口にあたるように
カメラをセットしました。
次はお金を三千円に減額しました。(笑)
でも三度目また同じ方なのでしょう、二ヵ月後の10月に
入りました。(笑)

現場検証。  カメラは? 映っていました。
顔を手で隠して入ってきたのは、お若そうな方でした。
はっきりと人物を特定するにはいたりませんでした。
事務所に入って出るまで、わずかに一分の時間でした。

さすがに今度は保険適応は遠慮させていただきました。
ドアの入り口にそのカメラに移っていた写真をはりだしました。
「泥棒はやめようね。 ガラスが何度も割れてもったいないです。
みんなが見てますよ。!」の息子の文章とともに。

それでも同じ方なのでしょう。12月4度目、まるで挑戦するかのように
今度は隣接する会議室の強化ガラスのドアガラスを割って
入ってきました。
三千円はなくなっていました。

現場検証。 
もうおなじみさんになった(笑)鑑識の方が言いました。

「お金はもう置かなくてもいいと思います。
ものを壊したり 火をつけたりしますと、懲役が7年に
のびますので、単なる窃盗の二年の刑期とは違いますから。
やつらはちゃんと知ってますから。」

そのお言葉どおりにレジのお金はすべて持ち帰ることにしました。
そしてレジには筆でこのように書きました。

「お金を家に持って帰ることにしました。すみません。」
そしてあけて正月早々の深夜 予想通り再び入りました。
 お金がなくてせっかくなのに、とても残念だったことでしょう。

現場検証。
会社の皆と警察の方々の期待は隠しカメラです。
今度は100%人物が特定できる方法と位置で撮影していたのです。
慎重に画像解析が始まりました。
ドキドキ。
でもなんにも映っていませんでした。
データのセットがきちっと入っていなかったようなのです。(笑)

不思議に安心しました。
会社の皆も同じ感じでした。

いよいよ6回目はあるのでしょうか。
皆は智慧を絞り、外部にもカメラ増設、そしてさらに照明を強化しました。

「幾度も見せられたこのわけはなんだろう。」と思いました。
「私の心の中に泥棒のような心があるのではないのだろうか。
全ての人を赦せよと言いながら、汝はほんとうに全ての人を
赦せるのかと 大きな問いを何度も何度もかけられているのだろうか。」

すこしも赦せない怒りにみちた小さな自分を時々見つけます。
幻のようなこの現実世界の未来不安に心が翻弄されています。
そして自分のプライドを砕くような言葉にも大きく反応もします。
そんな時少し平静になると
「なぜ生まれてきたのか。」と問いかける声が聞こえます。
ゆっくり歩いていきます。

そんな事件が収束し、何もない平安な日々が続いた
数年後、警察から連絡があり、犯人が捕まりましたと
知りました。

その方の平安を祈りました。

「した方より されたほうがもっとあかん」飯島さん