随想 伊路波村から100〜動かない物

旅に出て、平原の風にそよぐすすきを見る。

そこに立つ木を見る。

そして動かぬ巨石を見る。

木の枝や葉は風に揺らされるし、
もちろん植物も揺らされる。

でも石は風に吹かれるだけで、
ずっとそこにある。
私が死んでもそこにある。

そんなことが悲しくて、
涙ぐんだ秋の夕方もあった。

だけれども、よく考えた、つまらんことかも
しれないけれど。
この世に回転していないものはない。
原子一個から、地球や、巨大銀河系まで。
そして無限宇宙でさえ。

だから同じ場所、同じ空間はない。
巨石だって、動いているんだ。

地球に乗って、一緒に旅しているんだ。
そう考えたら、気が楽になった。

石がかわいそうでなくなった。

人間の勝手な思い込みは続く。